歯科の健康診断―仕事の能率を上げるのに必要!
2023.07.27
歯科の健康診断で休むのは能率が悪くなるような気がする。
こんにちは。安城市の神谷歯科医院院長の神谷繁彦です。
皆さん、大学の研究結果で、職場における歯科健診は歯科受診による欠勤日数の低下と関連することが判明してきたのをご存じでしょうか。
先日、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野の増子紗代大学院生、財津崇助教、相田潤教授の研究グループが、職場における歯科検診が歯科受診による欠勤日数の減少と関連することを明らかにしました。
この研究の一部は日本学術振興会科学研究費助成(20K10245)、厚生労働行政推進調査事業費補助金(21FA1301,22FA1010)、労災疾病臨床研究補助金(170501-01)の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際産業衛生誌 Journal of Occupational Health(ジャーナルオブオキュペーショナルヘルス)に、2023 年 6 月 24 日にオンライン版で発表されました。
考えてみれは当たり前のことかもしれません。しかし、働きバチになって頭がチンチンになり、他のことが考えられなくなるよりは、一度休憩して体のお手入れをすることのほうが、結果として仕事の能率が上がるのではないでしょうか。
これまで職場の健康増進プログラムがプレゼンティズム(出勤している労働者の健康問題(健診など)による労働遂行能力の低下)を減らしたほうが生産性が向上するということが報告されていました。
しかし、病気やその治療による欠勤は、仕事の生産性を低下させ、職場、企業名はもとより、世界的に重大な問題となっています。
歯科疾患は成人で罹患している人が多いため、口腔の問題による欠勤は、すべての病気による欠勤の 9.06%~26.7%を占めると報告されています。
職場での歯科検診は、定期的な口腔スクリーニングや健康教育の機会を提供し、欠勤を減少させると考えられます。しかしながら、職場における歯科検診と欠勤の関連は十分に検討されていませんでした。そこで本研究は、歯科検診の実施場所と歯科検診による欠勤の関連について明らかにすることを目的としました。
本研究は、2017 年 3 月にオンライン自記式アンケート調査を実施しました。
3,930 人(男性 2,057 人、女性1,873 人)の労働者(平均年齢 43.3±11.7 歳)のうち、職場で歯科健診を受けた人は歯科医院受診による欠勤日数(仕事を欠勤・早退・遅刻して通院した日数)が少ない傾向にありました。
過去 1 年間の歯科医院受診による欠勤日数は、歯科医院で歯科健診を受けた人で 0.57±2.67 日、職場で受けた人で 0.21±1.20 日でした。共変量で調整した結果、職場で歯科検診を受けた人は、歯科医院で歯科検診を受けた人よりも欠勤日数が 0.35日(95%CI、0.12-0.58)少なくなりました。
以上の疫学研究の結果から、歯科健診の実施場所が欠勤の重要な因子であり、関連する変数を調整しても職場で歯科検診を受けた人は、歯科医院で歯科検診を受けた人に比べて、歯科受診による欠勤が少ないことが明らかになりました。
よって歯科健診を職場で提供しても、欠勤日数の改善があるため、職場での負担は大きくない、むしろ軽くなる可能性があります。
つまり、健診を行う日数の欠勤より、治療による欠勤のほうが時間を取られるということです。
職場で歯科健診が提供されている場合、健康教育や歯科疾患の早期発見・早期治療により、欠勤が少なくなる可能性があります。
成人は歯周病やう蝕を有する人が極めて多く、国全体の 65歳以下の歯科医療費は、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病や精神疾患のそれぞれの医療費よりも大きい状況です。
今回の研究から、歯科健診を職場で提供しても、欠勤日数の改善があるため、職場での負担は軽くなる可能性があります。
産業保健や健康経営の中に歯科保健を入れていく一つの論拠に今回の結果はなると考えられます。
いかがでしょうか。
歯科健診は国民全体の負担を軽くできる可能性があります。
特に愛知県では事業所の歯科健診を診療所で行える健康保険組合、共済組合があります。
それに該当する組合の被保険者(場合によっては家族)もこの制度を使用してみてはいかがでしょうか?
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